マッピングエクスペリエンス
きたーーーーー!
インフォマッピング時代、来たでしょこれ。
あのオライリー※が、「情報のマッピング」をテーマにどどんと一冊書いてくれました!
※技術書とかデザインとかの良書を数多く手掛ける出版社。大きな本屋だとオライリーコーナーがあるほど。エンジニアなら大抵持ってるか、見かけたことがきっとある。
本の概要
全編にわたり、デザイン実務で利用できるマップとその用途を大紹介。
目次がこちら。
第一部 価値の可視化
1章 アラインメントダイアグラムとは
2章 エクスペリエンスマッピングの基本
3章 戦略的洞察の可視化
第二部 マッピングのプロセス
4章 始動ーマッピングプロジェクトの開始
5章 調査ーエクスペリエンス・リサーチ
6章 製作ーダイアグラムの描き方
7章 アラインメントー価値のデザイン
8章 将来のエクスペリエンスの構想
第三部 代表的なダイアグラム
9章 サービスブループリント
10章 カスタマージャーニーマップ
11章 エクスペリエンスマップ
12章 メンタルモデルダイアグラム
13章 空間マップとエコシステムモデル
ってことで、有名なカスタマージャーニーマップももちろん、「見かけたことあるけどこれって名前の付いたマップだったんだ!」的なものまで網羅。
この本を推す背景
私従来から「俯瞰が重要」「情報を可視化して整理することで見えてくることがある」と思い、何かにつけてフロー図にしてみたり目次作ってみたりしているんですが、賛同が得られないことも多々。
自分としては俯瞰やマップが有用であることについては確信に近いものを持っているんですが、そうでもないという反応があったり情報のマッピングについての書籍がなかったりでちょっと控えめに、細々やってました。
しかーーーーし!
そんな状況をきっと一変させてくれるであろう一冊。
近年、「顧客体験が重要」「全体を俯瞰したサービスデザインを」てな記事を目にすることが多くなっています。きっとその背景もあり「俯瞰」の価値が市民権を得始めているのでしょう。
有用な情報が盛りだくさんですが、思わず顔がほころんでしまった一節がこちら。
情報可視化の目的は
「目に見える形にすること」ではなく
「洞察を得ること」だ。
-ベン・シュナイダーマン編「情報可視化に関する論文集」
2章のトビラにある引用ですが、もう嬉しくなっちゃって。
大局観とか洞察とか情報の整理とか俯瞰とか。感覚的にはその重要性が分かっていてもなかなか言葉で説明できなかった部分を見事に言語化してくれていました。
リスペクト&感謝します、ベン・シュナイダーマンさん。オライリーさん。
これからインフォマップを描いていくうえでの大きな後ろ盾として、軸として心に刻まれました。
本の内容
本の内容としては、
・各種マップの概要や成り立ち
・用途と作成における具体的な観点・注意点
・豊富な実例
・組織で使っていくことを意識した実践的アドバイス
などがふんだんに盛り込まれています。
読み物というよりも実践のための参考書的かも。通しで読んでいくとちょっとくたびれちゃう密度とボリュームだったので、私の場合
・どんなマップがあるのか
・気になる&目を引くところをじっくり、そうでもないところはさらりと
・いざ必要になったタイミングでまた見ようと思いつつ頭に残す
という読み方しました。
マップの実例が、数ページにはひとつくらいの割合で一ページまるまる使ってどん!どん!と配置され、その内容を見ていくだけでも実に勉強になりました。
Booking.comの利用客のエクスペリエンスの包括的マップ、スターバックスカフェのエクスペリエンスマップ、などなどなど。
ネットに散在するマップを見ることはよくありますが、よいものを、日本語で、これだけたくさん読めるのはすごい。
あれ、そういえばほとんどのマップが日本語で、内容を読み解くのが楽でした。この手の翻訳本に使われている図って大抵英語で、雰囲気つかんで終わりにしちゃったりかなり頑張って読みこんだりしたり、が常ですが、これはほとんどその苦労を感じませんでした。すごい(なんせ掲載数が多いので英語のものもたくさんありますが)。
ネット検索より断然いいと感じます。
横長型
そして、この本、なんと横長型!!マップが多く掲載されており、たいていは横長だからでしょう。紙面をマップに合わせた結果と思いますが、もうこれも痛快。
オライリーの本って私の知る限り全部同じ大きさでキレイに書棚に並んでいるのですが、これは異彩を放つ、横長。
コンテンツが見やすいことを大事にし、読み手の視点に立った構成を検討された結果ここに行きついたのでしょう。著者&編集者の方、万歳。
常々思うのですが、人の視野って横長。思考するときの脳内視野もたぶん横長。なので、ディスプレイも横長。美しいといわれる黄金比も横長。アタマに入ってきやすいんだと思うのです。視野や脳内イメージと一緒の見え方が。
なので古今東西、およそマップと呼ばれるものは横長が多い。
マップに特化した本だからこそ、顧客体験を大事にするテーマだからこそ、の構成ですね。
勝手に今後の展望
情報をマップの形で表現するという手法、今後ぐんぐん伸びてくると思ってます。なぜなら、「高台に立ち、あたりを一望する」のが、人の本能的状況把握方法だから。城を築き、天守閣から眺める。詳しく見たければ遠眼鏡でズーム。戦況把握の基本だったでしょう。もっと古くは「木に登り、敵や餌場を探す」なんてのも。
あるいは地図。大航海時代に世界地図を頼りに幾多の人々が新大陸を目指しました。宇宙の果てを探求する物にとっては、天球図という形で。
いずれも、情報を俯瞰して入手するための、延々と続く人類の叡智と営み。
現代はその情報量が爆発的に多くなりました。でもそれを俯瞰する術についてはまだ形になってきていません。きっと今が、情報俯瞰の黎明期。
今後、情報入手媒体はPCやスマホなどの狭い画面からVRなどに移り、より大きな視野を手に入れる方向になるでしょう。そこで重要になるのは、いかに効率よく把握し、入手するか。
その入口はやはり、俯瞰できるマップ。
インフォマップという概念、まだ私の造語段階ですが、きっとこれから広がり育っていくと思います。この本の描く未来もきっと同じ方向を向いてるはず。
情報マッピング時代の先駆けとなる、歴史的一冊だと思います。
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